▼通勤に長い時間をかけている。ラッシュで混雑するなか、小走りで乗り換えのホームへと急ぐ日常。先日は車内で人と人の間に挟まれた傘が、人の流れとともにどこかへ独り歩きしていってしまった。都心で働くとは、そういうものだと思って生きてきた。

▼フリーランスの人は、通勤電車に揺られる会社員を哀れに思う。「私にはムリ。フリーでよかった」と。たまに通勤電車に乗ると「会社員は毎日大変だなあ」とSNSでつぶやく。通勤電車が嫌だからといっても、フリーランスは都心から地方に移住するケースは少ない。通勤電車が嫌でも、都心が嫌いなわけではない。

▼多様な働き方を実現するテレワーク。会社員でも、通勤電車に揺られなくていい。最近では地方創生の切り札として注目されているが、どうだろう。Uターンに貢献する程度ではないか。その地方に定住したいと思わせる魅力がなければ何も始まらない。過疎化にはきっと理由がある。

▼通勤電車は混雑していても、他人ばかりなので“一人になれる”貴重な時間となる。読書に集中できるし、メールをゆっくり確認することもできる。今はこの原稿を書いている。（風）