BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『IoTまるわかり』
2016/02/04 15:27
週刊BCN 2016年02月01日vol.1614掲載
2030年、ITが変える社会
「SIoT(System Integration of Things)~システム開発がIoTで変わる!」と『週刊BCN』でSIer向けにIoTを取り上げたのは、2015年6月のことである。タイトルでは“変わる”としたが、「システム開発を必要とする分野が拡大」が正確な表現だったのかもしれない。IoTはあらゆる分野に影響を及ぼす。IoTによって得たデータは何らかの処理が伴うため、システム開発が必ず必要となる。ゆえに、SIerを必要とする範囲は確実に広がっていく。夢も広がるが、SIerがIoTに取り組むのは簡単ではない。IoTデバイスの取り扱いや通信などの知識は、システム開発の現場で必要とされるケースが少なかったためだ。とはいえ、それは時間の問題。SIerにとって、将来の主力事業となることは間違いない。来るべき日のために、IoTで実現する近未来を知っておくべきだろう。
本書は、シンクタンクである三菱総合研究所の研究員が執筆したIoTの入門書である。SIer向けではないため、システム開発に直結するような解説はないが、日常生活と産業に与える影響をわかりやすく紹介している。なかでも、2030年という近未来社会における日常生活や仕事の様子を物語調に描いた序章は、シンクタンクらしさを発揮した解説になっていて興味深い。
IoTの影響を最も受けるのは、やはり製造業だ。本書では「ものづくり、サービス、消費者の境目がなくなる」の解説から始め、全体の半分近くを割いている。自動車産業におけるIoTとは何か。クルマ社会はどう変わるのか。そんな疑問にも答えてくれる。(亭)
『IoTまるわかり』
三菱総合研究所 著
日本経済新聞出版社 刊(860円+税)
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