BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『人生を面白くする本物の教養』
2015/10/29 15:27
週刊BCN 2015年10月26日vol.1601掲載
教養は自分の意見をもつための道具
ネットや政治の世界で反知性主義・反教養主義──議論することなく反対意見をすべて認めない。理屈を嫌う。熟慮せずリアリズムに則って行動する。やったほうが勝ち。言葉は美しいが空疎──の輩が跋扈するのに危機感を抱いたのか、このところ各社から知性主義・教養主義への回帰を志した書の出版が相次いでいる。本書はその流れに乗って、ライフネット生命保険の会長兼CEOである著者が身をもって体得した教養人になるための原理・原則を説く。自分の体験をもとに論を繰り広げる点では、かつて知性主義の凋落を如実に表したベストセラー『知的生活の方法』と同じだが、かたちから入るノウハウではない「原理・原則」であるところがミソだ。出口流の「教養」とは、「人生を面白くするためのツール」。知識や情報の量は大切だが、それはあくまでも手段に過ぎず、知識・情報をもとに興味の幅を広げ、自分の頭で考えることが重要だという。そのために必要なのが、「ボキャブラリー=引き出しの数」と、これらに関する「広く、ある程度深い知識」、そして考え抜いた末の「自分の意見」だ。著者がこれらを獲得するために、必ずしも意識することなく実践してきたのは、「本を読む」「人に会う」「旅に出る」というシンプルな方法だった。
本書の後半は、これらの「教養」の成果を時事問題にあてはめ、国内の諸問題と国際社会での日本のあり方を考えている。グローバルで通用する「教養」がいかに大切なものか、次代を担う若い人たちに考えてほしい。(叢虎)
『人生を面白くする本物の教養』
出口治明 著
幻冬舎 刊(800円+税)
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