今日のひとことWeb版

“攻めのIT”の極致

2015/08/05 15:26

 「Systems of Record(SoR)とSystems of Engagement(SoE)の融合」というコンセプトは、もはや、大手ITベンダーにとっては流行語のようなものです。多方面で繰り返し語られているので、あらためて説明するまでもないと思いますが、従来型の業務システムを指すSoRと、ソーシャルに代表されるコミュニケーション促進のための比較的新しい領域のシステムであるSoEを連携させることで、ユーザーのデータドリブンなビジネスを支援するソリューションを提案しようという考え方です。ユーザーのビジネスそのものの変革に深く関わる、“攻めのIT投資”の極致といってもいいかもしれません。

 SoRの代表格で、コモディティ化が指摘されていたERP市場も、大手ベンダーがSoEとの連携を前提とした新しいアーキテクチャの新製品を投入し始めたことにより、再び活性化しています。注目すべきは、やはり最大手の独SAPでしょう。SoRとSoEを融合させるためのプラットフォームとして、インメモリDBをコアとする「HANA」を自社で開発し、最新のERPもHANAに最適化しています。言い換えれば、動作環境をHANAのみに限定しているのです。旧製品のサポートを延長しているとはいえ、SAPの新しいERPを使いたければ、他社のDBソフトを選ぶことはできなくなったわけで、これはかなりインパクトがある話です。

 この決断は、市場に受け入れられるでしょうか。成否は、当たり前のことではありますが、投資に見合うメリットをユーザーに与えられるかどうかにかかっているといえそうです。新しい価値を理解してもらうのは骨が折れることですが、「これを乗り越えなければ将来の成長はない」という危機感の表れなのかもしれません。(本多和幸)

【記事はこちら】
ERP市場の地殻変動 トップベンダーの大転換がいよいよ現実に
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.8.5」より
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