BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『習近平の中国』
2015/06/18 15:27
週刊BCN 2015年06月15日vol.1583掲載
隣国への理解は共産党から始まる
「中国の夢」を掲げて2012年に中国の総書記の座に就いた習近平は、強烈なリーダーシップを発揮しながら、非常に速いスピードで政策や組織・機構改革を進めている。外交では硬軟を使い分け、とりわけ日本との間ではともに理性的な議論がなかなか進まない状況だ。こうした環境のなかで、これから先、両国が予測可能な安定した協力関係を築いていくにはどうしたらいいのか。本書はこの問いに対して真正面から「両国民がお互いに相手に対して正確な認識をもつこと」と答えながら、現代中国の実像を紹介していく。著者は2006~10年に駐中国大使を務めた元外交官。アジア局中国課長など、外務省でも中国畑が長い。そんな著者が説く中国理解の要が、中国共産党だ。13億の人口のなかに8668万人(2013年時点)の党員を擁し、大国を66年間統治してきた政権党。すべては党中央で決まり、地方で実行に移される政治のプロセス。社会に存在するあらゆる組織に党の組織が入り込んで実権を握り、行動の原動力になっている現実。“等身大の中国”への真の理解は、共産党を抜きにしては始まらないのだ。
著者は、・小平や趙紫陽、江沢民、胡錦濤から習近平に続く人脈や、現在の権力集中に至る道程、反腐敗闘争の“ハエ叩きとトラ退治”などの構造を、わかりやすく、しかし鋭い分析で解き明かしてみせる。
書評子は相対する書籍を読む際、キーフレーズが出てきたページの端を折るのを常としているが、本書を読み終わったとき、ほとんどすべてのページが折られていた。(叢虎)
『習近平の中国』
宮本雄二 著
新潮社 刊(760円+税)
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