BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『本は死なない』
2014/12/04 15:27
週刊BCN 2014年12月01日vol.1557掲載
Kindleの開発者が語る読書の未来
ヨハネス・グーテンベルクが15世紀に活版印刷の技術を発明して以来、印刷された本が広く普及し、宗教や科学に多大なる影響を与えた。ところが16世紀になっても、富裕層は印刷本を受け入れなかったという。文章を手書きで写した「写本」を好んだからだ。印刷本は、写本よりも安価だが、印刷機が印字した文字は機械的で人間味に欠けるというのが、その理由である。写本から印刷本への変遷と同じような変化が、電子書籍の登場によって起きるのだろうか。電子書籍を読むためのハード(リーダー)が増え、販売サイトの使い勝手もよくなった。しかし、印刷本がなくなる気配は今のところない。しばらくは写本が好まれたのと同様の歴史を印刷本も歩むのかもしれない。
印刷本を読む時代(Reading 1.0)から、デジタルの特性を生かした電子書籍を堪能する時代(Reading 2.0)へ。アマゾン・ドット・コムで電子書籍リーダーの初代「Kindle」の開発を指揮した著者が、読書の未来を語る。タイトルの「本は死なない」は、印刷本が死なないという意味ではなく、印刷本か電子書籍に関係なく、本は死なないという意味である。ただし、電子書籍がすばらしいという内容ではない。多くの人が読書を楽しむことができるなら、印刷本か電子書籍かは重要ではないと著者は考えている。
では、Reading 2.0とは何か。デジタルの特性が生きる読書のスタイルである。印刷本が電子化されたという単純な話ではない。そこではクラウドやビッグデータ、ソーシャルといった現在のキーワードが深くかかわってくると著者は考えている。(亭)
『本は死なない』
ジェイソン・マーコスキー 著
浅川佳秀 訳
講談社 刊(1600円+税)
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