BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『路地裏の資本主義』
2014/11/06 15:27
週刊BCN 2014年11月03日vol.1553掲載
街の喫茶店が消えた理由
日本長期信用銀行調査部長の任にあった竹内宏氏が30年ほど前に著わした『路地裏の経済学』を彷彿とさせるタイトルの本を書店でみつけて、思わず手に取った。もちろん、内容はまったく異なるが、二つの書籍に通底するものがある。それは庶民が肌で感じる景気や経済をテーマにしていることだ。第一章は、「そもそも資本主義とは何なのか」。社会主義や共産主義との対比で語られることが多い資本主義だが、実態はよくわからないというのが正直なところだろう。要するに資本主義はまぼろしではないかというのが、この章の趣旨になっている。
第二章からは、各論の展開だ。例えば、喫茶店が消えた理由を考えてみよう。1980年代の終わり頃、わが国にコーヒーチェーン店が登場したあたりから、従来型の喫茶店の旗色が悪くなってきた。日本人のライフスタイルの変化が従来型の喫茶店をさらに窮地に追い込んだ。喫茶店の椅子に座ってボーッと半日を過ごすような人間が生きていくことが難しい時代になり、非効率のモデルのような場所、喫茶店は隅っこに追いやられてしまった。いつの間にか、日本は東アジアの発展途上の文化国家というよりは、経済発展が極点にまで達した経済大国になっていたということだ。
そのほか、コンビニの少ない町では何が起きているのか。コンビニ生活では必要のなくなったもの、つまり友人の助けや家族の協力、地域の人々の支援などが何であったのかということに私たちは気づくだろうと結論づけている。(仁多)
『路地裏の資本主義』
平川克美 著
KADOKAWA 刊(780円+税)
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