BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『パーソナルデータの教科書』

2014/10/30 15:27

週刊BCN 2014年10月27日vol.1552掲載

消費者の反発を招かないデータ活用

 個人情報の漏えい事件が後を絶たない。関係者がデータをもち出したり、ネットワーク経由で不正侵入してデータを抜き取ったりするなど、手口はさまざま。企業は万全なセキュリティ対策を目指すものの、相手がみえにくい分、攻撃側の優勢な状況が続いている。

 2005年4月に全面施行された個人情報保護法は、企業はもちろん、消費者の意識も変えた。個人情報の漏えい事件を起こした企業は、消費者の信用を失い、法による罰則に加え、不買などの社会的な制裁を受けるようになっている。

 こうした背景が消費者の意識を過敏にして、購買行動の動向など、個人を特定できない情報(非個人情報)であっても、企業で扱うことを難しくした。それは、JR東日本が電子マネー「Suica」の利用データを日立製作所に販売した件で顕著になった。個人を判別できる情報は提供しないとしたJR東日本だが、利用者の反発を招き、当面の販売を見合わせる事態に追い込まれたのである。

 本書は、「パーソナルデータ」活用の有効性を説き、そのためには消費者とどのように向き合うべきかを示している。パーソナルデータについて、筆者は次のように定義している。「一人ひとりの個人に関連する情報の最も広い集合を意味する用語」。個人情報やプライバシーは、パーソナルデータに含まれる。

 パーソナルデータの活用は、消費者の反発というリスクを伴うが、新たなビジネスの創出に有効となる。結果、消費者にもメリットをもたらす。リスクを避けるのではなく、うまくつき合いたいものだ。(亭)


『パーソナルデータの教科書』
小林慎太郎 著
日経BP社 刊(1300円+税)
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