BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『リーダーズ・イン・ジャパン』

2014/10/02 15:27

週刊BCN 2014年09月29日vol.1548掲載

そのときトップはどう決断したのか

 わが国を代表する大企業のトップは、自社の行く末を左右するほどの岐路に立ったときにどう決断し、行動してきたのか。本書は、「そのとき」のリーダーの人物像に焦点を当てて、ドラマ仕立てで紹介している。

 米国で大規模なリコールが起き、下院の公聴会に出席することになったトヨタ自動車の豊田章男社長は、「(公聴会は)何を言ってもまともに聞いてくれない雰囲気だった。負け戦だったが、トヨタが好きだから、トヨタのためにやる。嘘つき、ごまかし、といった批判に対しては断固闘うつもりだった」と述懐している。

 今や流通の覇者となったイオンだが、前身のジャスコの時代は、ダイエーに蹴散らされる中堅スーパーにすぎなかった。当時のジャスコの社長、岡田卓也は、「タヌキやキツネの出るところに店をつくれ」と号令を発した。ダイエーが魅力を感じない地方都市に出店する戦法に転換したのだ。雌伏15年、ジャスコは再びダイエーに戦いを挑んで、ライバルを駆逐した。そして今、かつての王者ダイエーは、イオンの軍門に下っている。

 型破り経営者の代表としては、伊藤忠商事の岡藤正広社長が登場している。商社では常識の夜10時以降の残業を禁止したり、「決断は夜とか天気の悪い時にしないこと。悲観的になるから」と説いたりと、ユニークな考え方と実行力がビジネスパーソンの間で話題になっている。そのほか、名経営者たちの考え方とその基盤となった生い立ちなどがコンパクトにまとめられていて、つい引き込まれる。(仁多)


『リーダーズ・イン・ジャパン』
日本企業 いま学ぶべき物語
有森 隆 著
実業之日本社 刊 (1400円+税)
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