BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『人はデータでは動かない』

2014/09/18 15:27

週刊BCN 2014年09月15日vol.1546掲載

女子バレー躍進の秘密

 今年8月、東京で開催された女子バレーボール・ワールドグランプリ決勝ラウンドで、日本は惜しくも銀メダルに終わった。しかし、「ハイブリッド6」という新戦術がみごとに開花して、大きな話題となった。

 新戦術の生みの親は、眞鍋政義監督。試合中、iPadを手に選手へ指示を送る監督の姿をテレビ中継などで目にした人は多いはずだ。日本の女子バレーで、データをもとに戦略・戦術を繰り出す「ITバレー」を最初に取り入れたのは柳本晶一監督だった。眞鍋監督はそれを継承し、さらに発展させてきたのだが、実はITバレーには陰の立て役者がいる。その人物こそ、本書の著者、渡辺啓太氏である。全日本女子バレーボールチーム情報戦略担当(チーフアナリスト)という肩書きをもつ著者は、高校から大学にかけての青春時代にバレーボールとデータの結びつきに目覚めたという。その延長で全日本バレーボールチームのアナリストの職に就いた人物だ。

 「人はデータでは動かない」──。アナリストとしての自らの体験にもとづいてつけられたタイトルだ。スポーツ選手は、数字を苦手とする人が少なくない。「データの意味やそこから読み取れるものを説明する前に拒絶されてしまえば当然意図は伝わりません。選手にこうした壁を作られてしまっては、私の負けということになります」と述べる著者が力説するのは、人の心を動かすプレゼンの大切さ。バレーボールの選手を顧客に置き換えれば、そのまま営業の仕事に使えそうだ。(仁多)


『人はデータでは動かない』
心を動かすプレゼン力
渡辺啓太 著
新潮社 刊(1300円+税)
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