BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『システムインテグレーション崩壊』
2014/08/07 15:27
週刊BCN 2014年08月04日vol.1541掲載
好景気の今こそ準備が必要
システムインテグレーション(SI)業界は今、「案件よりも人がほしい」の声が挙がるほど、エンジニア不足に陥っている。巷は開発案件で溢れており、仕事を選べる状況にある。エンジニアの人月単価も上昇の兆しがみえ始めた。好景気に沸くSI業界だが、著者はあえて指摘する。「SIは崩壊する」と。ここで「そんなばかな」という反論を期待したいところだが、SI業界の関係者も、現状のままで安泰とは思っていないはずだ。本書の前半では、そのぼんやりとした危機感を体系立てて説明してくれる。
まずは、SI崩壊の根拠である。著者は「構造的不幸」「テクノロジーの進化」「ユーザーニーズの変化」の三つを挙げる。とくに重いのが「構造的不幸」であり、そこにはエンドユーザーと情報システム部門、そしてSIer(システムインテグレータ)の三者間で「ゴールの不一致」と「相互不信」があると著者は指摘している。
SI崩壊の根拠とされる残りの二つ、「テクノロジーの進化」と「ユーザーニーズの変化」をもたらす最大の要因は、クラウドの普及である。クラウドのスピード感がシステム開発にもスピードを求め、クラウドが推し進めた低価格化がシステム開発にコストダウンを要求する。ウォーターフォール開発を基本とする従来型のSIでは、この変化に対応できない。
では、SIerに生き残り策はあるのか。本書では先進的な取り組み事例を用いながら、SIerの進むべき道を示している。SI業界が潤っている今こそ、本書で自己改革の必要性をチェックしてみてはいかがだろうか。(亭)
『システムインテグレーション崩壊』
斎藤昌義 著
技術評論社 刊(1680円+税)
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