BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『知性を磨く』

2014/07/24 15:27

週刊BCN 2014年07月21日vol.1539掲載

21世紀に求められる知の変革

 すでに80冊を超えるビジネス哲学の書をものにしてきた著者の世界を濃縮した一冊。1972年、ローマクラブが『成長の限界』で鳴らした環境破壊や人口爆発への警鐘に、20世紀を生きた人々が答えを出すことができなかった要因を「知のあり方」に求め、21世紀で解決するための「知の変革」を説く。それを体現するのが、「スーパージェネラリスト」だ。

 ジェネラリストというと、一般的には広範囲の知識を保有し、一つの事象を多くの視点から捉える能力をもつ人、スペシャリストのもつさまざまな専門能力から生まれた成果を、分野を超えて水平統合する能力をもつ人を指す。しかし、著者のいう「スーパージェネラリスト」は、垂直統合の知性をもつ人材のこと。すなわち、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という七つのレベルの思考を切り替えながら並行して進め、さらにこれらを垂直統合できる人物のことを指す。そして、20世紀にはびこった専門主義・分業主義・客観主義の病を克服するには、一人ひとりが「スーパージェネラリスト」へと成長する必要があると説く。

 哲学ではあるが、使われるのはビジネスの現場ではおなじみの言葉ばかり。それらを再定義しながら、例えば「その本質は何か?」といった問いかけで思考を区切り、一段ずつ階段を上っていくような構成で説得力のある論を展開する。全25話、一日一話で1か月足らず。歩きながら考えて、実践しながら読み進めるといい。(叢虎)


『知性を磨く』
「スーパージェネラリスト」の時代
田坂広志 著
光文社 刊(760円+税)
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