BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『職場の人間科学』
2014/07/10 15:27
週刊BCN 2014年07月07日vol.1537掲載
人の行動を解析して生産性を上げる
世界中の企業がこぞってビッグデータをマーケティング、すなわち外への発信に活用しようとしているなかで、これを内側の問題解決、つまり企業の生産性の向上に役立てようとする研究がある。それが、社会学の一分野で、最新のテクノロジを駆使するピープル・アナリティクス(人間解析学)だ。本書では、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員の著者が、その研究成果の一端を披露している。アンケートや適性検査、観察など、社会学の定番ツールに代わって使われるのは、最新のセンサと信号処理アルゴリズムを搭載した「ソシオメトリック・バッジ」。何百人、何千人の社員の数か月にわたる会話や動き、位置の精密な情報という膨大なデータを収集・分析し、課題解決の方策を見出していく。
例えば、定型業務として確立しているコールセンターの運営。従業員のストレスがたまりやすい職場で、彼らのストレスは顧客満足度の低下や離職率の上昇という生産性の低下に直結する。では、彼らに気持ちよく働いてもらうには、どうすればいいのか。バッジから得られた数千時間分のデータのほか、アンケート、メール、生産性指標などを分析し、仮説にもとづいて実験した結果、「同じチームの全員が同時に休憩する」ことで従業員が気持ちよく働くことができ、最も生産性が向上することがわかった。「休憩は交代で」というこれまでの常識を覆したわけだ。
人間の行動を測定する最新の技術が、われわれの働き方を変えようとしていることを平易に説いた好著。(叢虎)
『職場の人間科学』
ビッグデータで考える「理想の働き方」
ベン・ウェイバー 著 千葉敏生 訳
早川書房 刊(1800円+税)
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