BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『農業・農村で幸せになろうよ』
2014/05/08 15:27
週刊BCN 2014年04月28日vol.1528掲載
若者の間に広まる農村指向
「三ちゃん農業」という言葉があるように、農家の働き手が少なくなって、農業は衰退産業の代名詞みたいに思われている。だが、ここへきて風向きが変わってきたようだ。「ノー政」と揶揄されるような監督官庁の場当たり的な農業政策からの脱皮の兆しがみえるし、なによりも若者が農業や農村に目を向け始めたことが心強い。この本は、札幌テレビ放送のアナウンサーやキャスターを務めた著者が、日本の各地で農業(農村)を元気にするキーパーソンたちにインタビューする構成になっている。
登場者は、NPO法人「えがおつなげて」代表理事の曽根原久司氏をはじめ、江戸中期から十数代続く東京・練馬の農家「白石農園」の白石好孝氏、宮城県の鳴子温泉で都会と地元をつなぐグリーン・ツーリズムの活動を続けている「宿みやま」の板垣幸寿氏など、12人。それぞれが自らの活動に誇りをもち、生き生きと話す様子が伝わってくる。例えば、「えがおつなげて」の曽根原氏。東京の会社を転々とした後、山梨県の農村で「半農半コンサル」から始めて、いまや地元の人たちの絶大な信頼を集めている。山村の限界集落で耕作放棄されている遊休農地の「開墾ボランティア」を都会の若者に向けて募ったところ、500人も集まったそうだ。「農村には眠ったままの宝がたくさんある」。農業ボランティアでは人気がなかったのに、農村ボランティアと名称を変えたら、どっと人が集まってきたという話には、「なるほど」と思わせる説得力がある。(仁多)
『農業・農村で幸せになろうよ』
農都共生に向けて
林 美香子 編著
安曇出版 刊(1500円+税)
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