BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『伝える極意』
2014/04/24 15:27
週刊BCN 2014年04月21日vol.1527掲載
実践から学ぶ意志伝達の手法
著者は、1978年から2000年まで、先進国首脳会議(サミット)で同時通訳を務め、さまざまな国際会議で裏方として活躍してきた女性通訳者の草分けである。大学2年生のとき、東京五輪で通訳アルバイトを経験したことをきっかけに、卒業後、創業間もない通訳者集団のサイマル・インターナショナルで通訳者の道を歩んできた。最近では、話題になったNHKの『ハーバード白熱教室』で、マイケル・サンデル教授と日本人出席者のキャッチボールをサポートしている。本書は、その半生を振り返って、実践的な視点から「発言する」ことと「伝える」ことの違いを考える構成になっている。自伝部分が大きく、その意味でタイトルの『伝える極意』は本書の魅力を正確に“伝えている”とはいいがたい。少なくともハウツー本ではない。しかし、帰国子女でもない著者が思考を深めることによって通訳者として成長していく姿は、非常に興味深い。
著者は、人と人とが言葉を介してコミュニケーションしようとするとき、自分の意志を確実に相手に伝えるためには、「誰かに伝えたい内容(コンテンツ)があるか」「それを伝える熱意があるか」「話を相手にわかりやすくするための論理性・構成力があるか」に加えて、「どのように話せば相手に伝わるか」を考えることが重要だという。これらが具体的にどのようなものなのか、またどうすれば身につくのかは、本書を読まれたい。同時に、現場でのさまざまなエピソード──とくに政治家の発言や態度──に、思わずニヤリとさせられることを保証する。(叢虎)
『伝える極意』
長井鞠子 著
集英社 刊(680円+税)
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