BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本人と神様』

2014/02/27 15:27

週刊BCN 2014年02月24日vol.1519掲載

神社におわす神を平易に解説

 「神」という言葉を口にするとき、欧米人と日本人とでは、信仰のあるなしにかかわらず緊張感が違うと感じていた。欧米人が頭の中に明確に神の像を描きながら畏敬をもって口にするのに対して、日本人はまるでそこに神がいるのが当然のように、しかしその神とは何を指すのかをあまり考えることなく、気軽に神をもち出す。八百万の神々がまるで友人かのように。初詣やお宮参り、七五三、結婚式、厄払いなど、人生の節目に神社を訪れはするが、そこに何が祀られているかについてはあまり思いをいたすことはない。本書は、そんなわれわれと神との日常的なつきあいから、神社におわす神の像をわかりやすくまとめている。

 日本の神々を、本書は四つに分類する。地域住民の心のよりどころ、団結の証である「氏神」、商売繁盛や縁結び、学業成就など、特定の願いをかなえてくれる「機能神」、人知を超えた計り知れない霊力をもつ「霊威神」、木や火、山、水などの自然や、家のかまどや厠に宿る「生活神」だ。われわれは常にこの四つの神々とおつき合いをしている。これを基礎にしながら、神社の分類、社の構造、神職、祭礼、そしてこれもまた日本人の心の中に深く入り込んだ宗教である仏教との関係など、われわれが神道に関して日頃何となく疑問に感じながらそのままにしていたことが、平易に解き明かされていく。神々の名にすべて振りがなが振ってあるのも、非常にありがたい。読了後、初めて神社を訪れたとき、これまでとは違う世界が広がっていることに気づいた。(叢虎)


『日本人と神様』
ゆるやかで強い絆の理由
櫻井治男 著
ポプラ社 刊(780円+税)
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