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真の農業IT化はこれから

2014/02/21 15:26

 ITベンダーの未開拓領域といわれ続けてきた農業の分野ですが、ついに本格的なIT化の市場が立ち上がってきました。私が取材を開始した2012年の夏頃は、農業IT化に特化した調査データは存在せず、将来どうなるのかはまったくの未知数でした。しかし、今年1月に調査会社のシード・プランニングが初めて農業IT化の市場予測を発表。これによると、13年の市場規模は66億円で、20年までに600億円まで拡大。とくに農業クラウドサービス市場は、13年の28倍になると予測しています。

 実際に、農業ITに積極的な大手ベンダーは、順調に顧客を拡大しています。とくに好調なのが富士通で、12年10月に発売した食・農クラウド「Akisai」は、13年度の売上げは10億円の見込みで、15年度には損益分岐点に達する勢いです。

 しかし、地方で農業ビジネスに取り組んでいるITベンダーからは、「『Akisai』のような高価なサービスを利用できる農家はほんの一部」という声も耳にします。例えば、「Akisai」の「生産マネジメント」の月額利用料は4万円ですが、多くの農家の年間IT投資可能額は10万円以下。利用のハードルは高いのです。

 富士通の売上げが大きいのは、大規模農家や流通業の新規参入農家など、IT投資意欲が高い農家を主要ターゲットに置いているからで、IT投資意欲の低い小規模農家の開拓が進んでいるとはいえません。日本の大多数の農家は小規模農家。この領域の開拓がITベンダーの今後の課題でしょう。(真鍋武)

【記事はこちら】
農業ITが本格始動 大手ベンダーは農業のプロとの連携を推進
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2014.2.21」より
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