BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『謎だらけの日本語』
2013/12/05 15:27
週刊BCN 2013年12月02日vol.1508掲載
言葉に関する気づきを生む
言葉に関しては保守的であれ、と考えている。コミュニケーションの土台は、意志を伝える相手と同じでなければならないと思うからだ。一方で、言葉は時代とともに移り変わる。新しい言葉や用法が次々と生まれ、それが人口に膾炙することによって定着する。だがこれもまた、既存の言葉をもとに発想し、新語や新用法が生まれると解釈すれば、保守の否定にはつながらない。むしろ、こと言葉に関しては、革新は保守からしか生まれようがないといっていい。本書は、日本経済新聞電子版の連載「ことばオンライン」を加筆・修正し、再構成したもの。執筆には、記事審査部の21人の記者があたっている。ひと言で表せば言葉の雑学本ということになるのだろうが、そこは新聞社、ニュースとしっかり絡めている。政治からは、かつて宇宙人宰相が誤用した「朝三暮四」「朝令暮改」や「聞く耳」を引っ張りだし、「地産地消」や「駅ナカ」などの産業・経済系、「就活」「婚活」に代表される○活言葉などの生活系を押さえながら、業界で異なる「動線」と「導線」の使い方、ロシアを表す「魯」が「露」に変わるいきさつなど、日経ならではの言葉も引いている。「消費者離れ」の考察もおもしろかった。
本書の効用は、言葉に関する気づきを生むことにある。例えば「負け癖はあるけれど勝ち癖はない」から、あ、これは「死にざま」と「生きざま」だな、と気づくこと。この気づきが、保守の素養を培う。画竜点睛を欠く記述も見受けられるが、これは新しい時代の日本語として認めよ、ということか。(叢虎)
『謎だらけの日本語』
日本経済新聞社 編
日本経済新聞出版社 刊(780円+税)
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