BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』

2013/11/14 15:27

週刊BCN 2013年11月11日vol.1505掲載

日本の半導体が韓国に負けた理由

 第二次大戦の開戦当初、米国戦闘機の零戦対策は、「(零戦を)見つけたら、ひたすら逃げること」だったそうだ。ところが、戦争が長引くにつれて、零戦の無敵性が失われていく。敵国の戦闘機を徹底的に分析した米国は、零戦の問題点、すなわち高高度性能、高速性能、防弾性能に劣ることを見つけ出し、戦闘機グラマンを投入した。零戦の弱点を突いて、高高度からの一撃離脱戦法で次々と撃墜していった──。

 日本の技術力の結晶ともいえる零戦の姿に半導体産業の凋落を重ね合わせて、なぜそのような事態を招いたのかを検証し、日本のモノづくりが復権するためには何が求められているかを論じたのが本書である。

 1990年代以降、韓国サムスン電子が急成長し、それに反比例して日本のDRAMはシェアを落としていった。エルピーダメモリは、行き詰まった日本の最後の砦として、経済産業省の後押しで設立された日立とNECの合弁会社である。筆者は、2002年、日立製作所からエルピーダに出向し、そこで日本の技術力に疑問を抱くに至った。同じDRAMをつくるといっても、日立とNECではこうも違うのかと驚いた。かつて中島飛行機と三菱重工で同じ零戦をつくっているにもかかわらず、標準化がまったくできていないために量産化できなかった事実と似ているというわけだ。日本のモノづくりの凋落は、低価格で量産する技術を磨いてこなかったからであり、「模倣」こそが復権の鍵になると結論づける。(仁多)


『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』
湯之上 隆 著
文藝春秋 刊(770円+税)
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