BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない?』

2013/10/24 15:27

週刊BCN 2013年10月21日vol.1502掲載

ヒット創出のパターンを分析

 テレビ・出版・ゲーム・映画・音楽などのコンテンツ産業は、これまで偶然のヒット商品に支えられてきた側面がある。当たるかどうかは出してみなければわからない。一人の天才クリエイターに頼る時代が終わり、組織でコンテンツをつくり上げることがあたりまえになったいま、バクチのような状況から抜け出すためには、ヒット創出のパターンをもとに戦略的な経営を行うことが必要だ。本書の眼目は、そのパターンを見出し、コンテンツ産業を発展に導くことにある。

 著者は、市場拡大のパターンを3類型に分類する。コンテンツが生まれたときは、まだヒットではなく、単なる「孤島」にすぎない。ここに柳の下の2匹目のドジョウを狙う輩が現れて似たコンテンツやサービスを提供すると、「群島」になる。これで一つのジャンルが確立する。さらに、「孤島」を核に別の提供形態、例えばマンガからアニメへ、玩具へ、文房具へと広げる「列島」、まったく違う土地(産業)に「孤島」の考え方を持ち込む「新大陸」。この3パターンに、あらゆる産業に共通するライフサイクル──黎明期・成長期・成熟期・完熟期──の図式をかけ合わせていくことで、収益モデルができあがる。

 著者は、生きるために必要ではないコンテンツ産業を、コミュニティ維持のために必要な材料と位置づける。一人でコンテンツを消費する時代は終わり、見知らぬ他人との競争・協調関係を創造していくコンテンツにこそ、勝機があるとしている。(叢虎)


『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない?』
中山淳雄 著
PHP研究所 刊(860円+税)
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