BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ものづくり成長戦略』

2013/09/19 15:27

週刊BCN 2013年09月16日vol.1497掲載

 21世紀に入った頃、これまで日本のものづくりを担ってきた世代が定年退職によって企業を離れることで、ものづくりの現場の知的空洞化が始まるのではないか、という危機がいわれた。これに対応して生まれたのが、「ものづくりインストラクター」の考え方である。定年退職したものづくりのベテランたちを、他の企業・業種でも現場管理や改善の指導ができる人材に育て、地場中小企業のものづくりの力を底上げしようという動きだ。本書は、その考え方とこれまでの実績をコンパクトにまとめている。

 ものづくりの技術は、本来、特定の会社や現場だけがもつ固有の技術ではなく、あらゆる現場に敷衍できる汎用的なものだという。「よい設計のよい流れをつくる」ことがものづくり技術の真髄なのだ。ただし、自分の知識や技術が自分の会社だけでしか通用しないと思い込んでいるベテランたちを、会社や業種を超えた指導ができるようにするためには、ティーチングの技術を含む訓練が必要だ。そこで設けられたのが、インストラクター養成学校である。

 2005年にスタートした東京大学ものづくりインストラクター養成学校は、これまでに88人の卒業生を輩出。インストラクターたちは、自分が働く会社のなかや地域で活躍するほか、企業や自治体、大学の協力を得て養成学校を設立し、その講師として後進の指導にあたっている。

 ベテランたちの知恵と技術を日本のこれからの発展に生かさない手はない。同時に、これは地域の活性化と産業を超えた知の連携につながる。(叢虎)


『ものづくり成長戦略 「産・金・官・学」の地域連携が日本を変える』
藤本 隆宏 柴田 孝 編著
光文社 刊(740円+税)
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