BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『コンクリート崩壊』
2013/08/01 15:27
週刊BCN 2013年07月29日vol.1491掲載
セメントと水、砂、砂利からできているコンクリートは、常温で水と化学反応を起こして固まる。圧縮には強いが伸張に弱く、これを補うために内部に鉄筋を抱き込んだものが鉄筋コンクリートだ。コンクリート自体が化学反応や凍害で傷んでいったり、鉄筋が塩害や中性化によって錆びたりすることが、崩壊につながる。一般に鉄筋コンクリート構造物は50~100年の耐用年数をもつといわれるが、厳しい条件下ではそれ以下でも崩壊する。
アメリカのインフラ整備が進んだのは、1930年代のニューディール政策の時代。それから50年がたった1980年代に入って、橋梁の落下や道路の陥没などの大きな事故が相次ぎ、「America in Ruins(荒廃するアメリカ)」といわれた。翻って日本では、1960年代の高度成長期に、新幹線や高速道路などの整備が進んだ。アメリカと同じ50年で危機が顕在化するとすれば、2010年代、まさにいまが危機の時代にあたる。
筆者は、コンクリート工学を学ぶ学生の減少や、技術の継承、「コンクリートから人へ」という一人歩きするキャッチフレーズなど、周囲を取り巻く環境にも大きな危機感を抱く。やや前のめりな記述も散見されるが、いま読まずしていつ読むのかという一冊だ。(叢虎)
『コンクリート崩壊』
危機にどう備えるか
溝渕利明 著
PHP研究所 刊(760円+税)
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