BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『くまモンの秘密』

2013/07/25 15:27

週刊BCN 2013年07月22日vol.1490掲載

 滋賀県彦根市の「ひこにゃん」と並ぶ人気者になったのが、熊本県で2011年3月に生まれた「くまモン」だ。

 広告費用に換算すると6億4000万円、キャラクター商品の売り上げは1年間で293億円(2012年)という稼ぎ頭に育ったくまモン。その成長の陰には、地方公務員集団の涙ぐましい努力があった──といいたいところだが、実際には軽いノリで進めていった「くまモン売り出し作戦」が見事にツボにはまったようだ。その活動ぶりをドキュメント仕立てで紹介したのが、この本である。

 「チームくまモン」という名前からして、ものものしいプロジェクトチームを連想するが、実態は県庁の複数の課にまたがる担当者レベルの「しがない地方公務員集団くまモンとおもろい仲間たち」という、ゆるい組織らしい。そのゆるさが、ユニークな戦略・戦術を編み出した。それは「熊本をPRしないPR作戦」に現れている。

 くまモンは九州新幹線の全線開業に合わせて、熊本を通過駅として埋没させない目的で誕生した経緯がある。だとしたら、普通は地元でのPRにしゃかりきになるところだが、くまモンは、ノリのいい大阪から人を呼び込む戦略に出た。そこで、大阪市中央公会堂の周辺や道頓堀商店街、はては甲子園球場などに神出鬼没する作戦をとった。以下、現在のステージに辿り着くまでの経緯が、まるでコミック本のように軽い感じで描かれている。県庁の職員であっても、民間企業顔負けのマーケティングができることを知った。(仁多)


『くまモンの秘密』
地方公務員集団が起こしたサプライズ
熊本県庁チームくまモン 著
幻冬舎 刊(820円+税)
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