BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『Yコンビネーター』
2013/07/04 15:27
週刊BCN 2013年07月01日vol.1487掲載
そう、育成したのだ。YCは単なるスタートアップ(ベンチャー企業)への投資集団ではなく、すぐれたアイデアをもっていたり、事業を始めたばかりのスタートアップの卵を育成する組織なのである。その成功の姿は、収益を上げることだけではない。ヘロクのように、IT企業に買収されることで巨額の富を得て、それを新たなアイデアに投資したり、次世代のスタートアップへの投資に回したりすることが、米国IT産業の隆盛につながっていく。
YCの「学期」は年2回。2011年夏季の場合、2000組の応募者のうち面接までたどり着いたのはわずか170組で、最終的に選ばれたのは64チームだった。YCへの参加が認められれば、スタートアップのチーム全員がシリコンバレー周辺で3か月間、暮らすことになる。その間、YCのパートナーが助言し、方向転換を促し、毎週ゲストを招いた夕食会で気づきを与える。そして3か月後の「デモ・デー」で、多くの投資家たちを前に成果を発表する。
創業者のポール・グレアムは独自の投資哲学をもち、YCの実体は長くベールに包まれてきた。YCに密着し、スタートアップたちの悪戦苦闘する姿を描いたIT業界人の必読書である。(叢虎)
『Yコンビネーター』
ランダル・ストラス 著
日経BP社 刊(800円+税)
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