BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『戦略論の名著』

2013/06/20 15:27

週刊BCN 2013年06月17日vol.1485掲載

 国と国とのいさかいを平和的に解決するのが外交。それが失敗に終われば、力と力の戦い、すなわち戦争になる。外交にも戦争にも必要なのが戦略で、これがないと自国に有利な結果は得られない。戦略とは生き残りを賭けて戦う方策であり、その理論はしばしばビジネスに適用され、経営層の決断を支えてきた。

 本書は、戦略を説いた古今東西の名著の横顔を、防衛・軍事・地政学の専門家たちが簡潔に紹介した一冊。ビジネスに敷衍適用した戦略ではなく、歴史に学び、外交と戦争における戦略の本質を知るためのガイドブックだ。

 紹介されるのは、「戦わずして勝つ」の孫武『孫子』、リーダーシップを論じたニッコロ・マキアヴェリ『君主論』、戦争を明確に定義したカール・フォン・クラウゼヴィッツ『戦争論』という戦略論の三大古典をはじめ、海洋支配の重要性を「シーパワー」という概念で説いたアルフレッド・セイヤー・マハン『海洋権力史論』、現実的な戦争論としての毛沢東『遊撃戦論』と石原完爾『戦争史大観』、歴史から情報通信の使われ方を解き明かしたマクレガー・ノックス&ウィリアムソン・マーレー『軍事革命とRMAの戦略史』、古典地政学を宇宙に適用したエヴェレット・カール・ドールマン『アストロポリティーク』など、12冊。

 研究の副産物として生まれた本なので文体は平易ではないが、書の内容だけでなく、著された経緯や時代背景、著者の人となりなどを簡潔に紹介しているので理解しやすい。こんな論文を新書で読むことができるというのは、新書乱立時代も悪くないのかも知れない。(叢虎)


『戦略論の名著』
野中 郁次郎 編著
中央公論新社 刊(800円+税)
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