旅の蜃気楼
人生を楽しむ先輩との再会
2013/06/05 15:38
▼山に出かけるたびに、その時々でいろいろな人とすれ違う。少し前は山スカ(山歩き用スカート)をはいた若い山ガールに目を瞠った。ところが今は年齢を特定するのが難しい、というほどの広がりぶりだ。その前は中高年登山の一団とすれ違い、「お先にどうぞ」と登り優先のルールに従って道を譲ると、なんと30人ほどの列に呆れてしまうこともあった。他人事のように中高年とはいっても、こちらも中高年なので、親近感を覚えるような、その反面、「こちとらは鍛え方が違うぞ」と強がってみたり、いろんな年齢を通過している。
▼つい先日のことだ。ユガテを過ぎて座るのに適当な倒木で、“イッポン(休憩)“とっていたら、近くで休んでいる年上の男性が微笑みながら話しかけてきた。「からだが弱ってきたので、去年から歩き始めました。ようやくここまで歩けるようになりました」「おいくつですか」「80歳になりますよ」。この地点は、どこから歩いても山道を1時間は歩くことになる。凄いな、79歳から登り始めて、歩けるようになるんだ。立派だな、と感心することしきり。こちらは1か月ぶりの山登りで、脚が重い。
▼岡山に出かけた。5月21日のことだ。岡山はジャストシステムで大活躍した加藤彰さんの郷里だ。加藤さんとはFacebookで再会した。コレガを引退してから、加藤さんは山登りを楽しみ、海では魚釣りに興じ、オートバイで全国をツーリングしながら世の中の変化を楽しんでいる。からだが動くうちに「最も人生を楽しんでいる」一人だと思う。Facebookでそんな加藤さんの活動を知って、一緒に遊んでほしいと思って連絡したら、「いいよ、岡山空港まで迎えに行くよ」となった。
▼「こんにちは、お久しぶり」と挨拶を交わし、車でピックアップしてもらって、総社市にある鬼城山(きのじょうざん)に案内してもらった。そこは標高397mの頂上に城壁を張り巡らし、溜池をつくって生活できる広い城址だ。史跡の発掘が進んで、再現工事も進んでいるが、史実がないという不思議な場所なのだ。天智天皇2年(663年)、倭国は白村江の戦いに敗れる。その当時に生きた人たちの城だ。あちこちから倭の国の欠片が出現する。何とも、ワクワクする。2013年のスマートフォン時代の欠片は1500年先にどんな形になっているのだろうか。岡山は、神話でいう国つ神の出雲とは街道続きで、古墳だらけの土地柄だ。古い神社も多く、時間をかけて歩くには格好の場所だ。近江の里と同様に歩きがいがある。健脚の加藤さんの案内で山城址を散策する。「この道は昔はなかったんよ」と、昔とは小学生当時のようだ。加藤さん、ありがとうございました。お昼に食べた牛どんも美味かったです。(BCN会長・奥田喜久男)
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