北斗七星

北斗七星 2013年5月27日付 vol.1482

2013/05/30 15:38

週刊BCN 2013年05月27日vol.1482掲載

▼ヤマト運輸の故小倉昌男氏とTKCの故飯塚毅氏。両者に共通するのは、国の規制に敢然と挑んで緩和を成し遂げた名経営者であることだ。陸運業界が当時の運輸省の規制でがんじがらめだった頃、小倉氏は官と戦って宅配便という新業態を生み出した。飯塚氏は国税庁の弾圧に屈せず、無罪判決を勝ち取った。儲けは二の次で、利用者の利便性や規制の不条理を問い続けた両氏の努力の末に今がある。

▼一線を退いて福祉財団の理事長職にあった小倉氏の職場を、野家の安部修仁社長は「昔の小学校の保健室のように無駄がなく質素」と評した。虚飾を排して実質本位の人だったようだ。「サービスが先、利益は後」は小倉氏の名言だが、顧客サービスの本質を突き詰めようとしない企業への警鐘でもある。

▼自民党政権になって景況感は上向き加減。事業は革新性さえあれば「うまくいく」と勘違いしがちでもある。5月と6月は、IT業界では法人市場の“夏商戦”。各種イベントは華やかだが、顧客指向を貫くベンダーと、新技術に目を奪われただけのベンダーとでは、商品の差が歴然としてしまう。小倉・飯塚両氏の時代からさらに進んで、「顧客の先の顧客」を見据えた品揃えと提案ができるかどうかが成否の境目になる。(吾)
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