旅の蜃気楼
山の神、海の神
2013/05/29 15:38
▼上高地の美しさは、四季を織りなす色合いで描いた生きたキャンバスだ。ぜひ、一度は見ていただきたいお山です。河童橋の周辺には山小屋風の宿泊施設がたくさんあって、山歩きをしなくても、この景色を見るための展覧会気分で結構です。ここには正真正銘の帝国ホテルがあって、宿泊代は高いけれども快適です。ハヤシライスが美味しいです。
▼山だけでなく、海にも神が棲んでいるのかもしれない。今年は伊勢神宮の御遷宮(ごせんぐう)がある。10月2日は内宮、10月5日は外宮。遷宮の説明は先に譲るとして、それに先立つ「お白石持」という行事がある。伊勢の北側を流れる宮川で拾い集めた手頃な大きさの白い石を、外宮と内宮の新しいお社の建つ御垣内に敷き詰める行事だ。ただそれだけの行事だが、この行事でしか入れない場所に立ち入ることができる。それは新しくできた御垣内の一番奥に建つ神がおわす御正殿だ。10月の御遷宮までは、神が不在のただの建物。神がいない間に白い石を持って入ることで、近くに寄ることができる。それが許されるのは伊勢に住む人たちだけだ。神領民という言い方もある。その行事に参加するには、前もって禊をしなければならない。
▼5月11日、私は二見浦にある二見興玉神社に参拝して禊をしてきた。このお社は夫婦岩で有名だ。ご祭神は猿田彦大神。この神はその昔、神が天からこの土地に降り立つ時の案内人なので、今でいえば神宮へ皆さんをお連れする道案内人ということになる。さしずめツアーガイドといったお役目だ。私たちの先祖は山にも海にも神が棲むと考えたようだ。
▼そういえば、データセンターのアールワークスのサーバールームに入ったら、「電電宮」という神が祀ってあった。このお札を見たとたん、安心感が湧き上がってきた。神代の時代も今も変わらないのかしら。(BCN会長・奥田喜久男)
- 1