BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『おどろきの中国』

2013/05/16 19:47

週刊BCN 2013年05月13日vol.1480掲載

 三人の社会科学者が、中国の歴史や社会をテーマにして、鼎談(ていだん)で論じた本である。「おどろきの中国」というタイトルからして、やわらかくて気軽に読める内容をイメージしたが、あまりにも濃密な論が展開されていて、おどろいた。

 「中国とはそもそも何か」「近代中国と毛沢東の謎」「日中の歴史問題をどう考えるか」「中国のいま・日本のこれから」の四部構成で話が進んでいく。

 鼎談は、「中国は国家なのか?」という素朴な疑問からスタートする。「国家」というのは、ヨーロッパの概念であって、それが形づくられた歴史はせいぜい400年くらいのもの。対して、中国という国は紀元前16世紀の夏王朝を起源として、殷、周、春秋・戦国時代と続き、前221年に秦の始皇帝による統一が成ったとされている。歴史のスケールが違うのに、ヨーロッパのものさしで中国のことが測れるのかというのだ。三氏それぞれの見解が述べられているが、「中国を理解するうえでヒントになるのは、EU(ヨーロッパ連合)だと思う」という見方は興味深い。地方の政府を形成していた春秋時代の覇者たちが、戦いに明け暮れた不幸な時代の経験を踏まえて、全体が一つの政権に統一されるべきだという意思統一ができあがった。それが中国だというのである。

 中国に関する書籍は星の数ほどあるが、社会科学からのアプローチは随所に「なるほど」と思わせるところがあって、おもしろく読めた。(仁多)


『おどろきの中国』
橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司 著
講談社 刊(900円+税)
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