旅の蜃気楼

創業者魂は色あせない

2013/04/24 15:38

【内神田発】会長に就任して3週間が過ぎた。どこかで「社長~」と呼ぶ声が聞こえると、反応してしまう自分がいる。逆に「会長~」と声をかけられても、誰のことかと、どこ吹く風だ。長い間の社長としての行動原理が自分を支配しているので、考え続けていることを実際の行動で表現しようとする自分がいる。ところが会長の立場になると、手も足もないダルマ状態だと自分に言い聞かせていることもあって、心身の収まり具合がどうもしっくりこない。

▼会長と社長の組み合わせは千差万別だが、創業者にとって、会社は自分自身の具象に近い。会長であろうが社長であろうが、「思い」は入道雲のようにモクモクと湧いてくる。「思い」は「夢」と言い替えてもいい。最近、お二人の創業者に刺激を受けた。一人はヨドバシカメラの藤沢昭和さんだ。日経MJ4月14日号によると、「自分も77歳。一線でやるのはあと2、3年ですかね」。すごい、のひと言で、経営の大先輩に対して失礼だが、エールを送りたくなる。

▼もう一人は、ドン・キホーテの安田隆夫さんだ。同郷の岐阜県出身の経営者として、これまでも動静は気になっていた。報道によると、4月8日付で社長に復帰された。2005年、会長兼CEOに就任されて、このほど会長兼社長兼CEOになられた。63歳。創業者の強いエネルギーを感じて、ウーンと唸ってしまう。創業者は創業者であって、肩書きでは言い表せないエネルギーを放出している。

▼この力を創業当初からもっているかといえば、そうではない。備わっているかもしれないが、未知な特性であって、自らを振り返ってみても、起業当初から自信をもっていたわけではなかった。ただし、事業の歴史を重ねるうちに、経験として自分の機能が磨かれていくことは感じた。今だから言葉にできるが、焼かれ叩かれ冷やされるうちに強くなるハガネと同じような道程をたどってきた。

▼こうした道程は、創業者に限ったことではないかもしれない。しかし、万が一の場合は家族が路頭に迷う。事業活動を続けていれば、花が咲く時があるが、なぜか必ず苦しい時も周期的にやってくる。その時にこそ「夢」の入道雲がモクモク湧き上がる人は、創業者の資質があるといえる。私に会長就任の背中を押してくださった方は、創業者ではないが、創業者の魂をもった方なので、「この方が背中を押すのならば」と決めた。いい言葉は古今東西に山ほどある。だが、感銘を受けるのはこの人が言うからだ。(BCN会長・奥田喜久男)

思いは中国大陸へ

2013年4月16日記
  • 1

関連記事

<全国ショップ激戦図>100.東京・秋葉原地区(上)

<秋葉原は今>3.大幅改装で業態転換相次ぐ

生きている“経営者の目線”