BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『世界は考える』

2013/04/04 15:27

週刊BCN 2013年04月01日vol.1475掲載

 世界を代表する学者、政治家、実業家、知識人の意見を、152か国・約500の新聞・雑誌をつないで配信する国際的な言論組織、プロジェクトシンジケート。本書は、国際通貨基金専務理事のクリスティーヌ・ラガルド、執筆当時はアジア開発銀行総裁で、つい先日日本銀行総裁に就任した黒田東彦、マイクロソフト創立者のビル・ゲイツ、ハーバード大学教授のマイケル・サンデルら、23人の権威たちが2012年の世界の政治・経済の状況を振り返り、明日への処方箋を記した一冊だ。安倍晋三総理大臣も寄稿していたのだが、「諸般の事情」(前文)から日本版への掲載はかなわなかったという。

 論客たちの多くが掲げた昨年の世界経済のキーワードは、新興国をも巻き込んだ「ユーロ危機」。これに関して、統一通貨の欠陥を端的に指摘しているのは投資家のジョージ・ソロスだが、彼はそこから打開への方策を見出してはいない。一方で、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメント会長のジム・オニールは、「米国と中国の指導体制に決着がついた今(中略)、新しい一年の経済動向を見通す環境がようやく整った」として、「欧州の危機はメインストーリーにならない」とみる。そして「Growth 8」「Next 11」という成長国の群れに目を向ける。

 23人の分析やものの見方には悲観と楽観が入り交じり、なかには真っ向からぶつかるものや我田引水に近いものもある。しかし、だからこそ政治・経済・社会を多角的にみる助けとなる。(叢虎)


『世界は考える』
中園 徹 著
土曜社 刊(1800円+税)
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