ソニーとオランダのフィリップス（現NXPセミコンダクターズ）が共同で開発した近距離での無線データ通信の規格。2003年12月に「ISO/IEC 18092」として国際標準規格に認定された。

　対象物に直接触れることなく、10cm程度の近距離から対応する機器やカードをかざすだけで、データ通信をすることができる。ICカードだけでなく、携帯電話や家電製品、パソコンなど、さまざまな電子機器がNFCの機能を搭載している。近年では、NFC対応のスマートフォンやタブレット端末が注目を浴びている。例えば、キャンペーンポスターに貼りつけたICタグにNFC対応のスマートフォンをかざすと情報を読み込んで、キャンペーンの詳細を閲覧したり、クーポン情報を取得したりすることができる。

　データの読込み/書込みだけでなく、端末間での双方向の通信（P2P）にも対応。音声や画像、動画などのファイルを106～424 kbpsの速度で交換することができる。また、NFCは交通電子マネー「Suica」や「Edy」で知られる非接触ICカードの規格「FeliCa」や、海外で普及している通信規格「MIFARE（ISO14443 TypeA）」など、複数の通信規格と互換性がある。これによって、これまでは不可能だった通信規格の異なる機器やICカード同士でのデータ通信を実現する。例えば、NFC搭載のスマートフォンを活用して、日本で普及しているFeliCaを利用して、海外ではMIFAREを利用するといったことができるわけだ。

　現在、NFCは急速に普及しつつある。調査会社の矢野経済研究所は、国内のNFC対応携帯電話/スマートフォン/タブレットの2012年度の稼働台数を前年度比18.9％増の2390万台と推定。15年度には4885万台まで成長すると予測している。