BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『コピーキャット 模倣者こそがイノベーションを起こす』

2013/02/21 15:27

週刊BCN 2013年02月18日vol.1469掲載

 挑発的なタイトルである。日本語にすれば「猿まね屋」といったところだろうか。この「困ったやっかい者」という「模倣(イミテーション)」に対する固定概念を覆して、戦略とオペレーションという経営のステージの中央にもってくることが本書の主題。「模倣は悪いこと」という倫理的な思考を否定しているのではない。拙劣な模倣が引き起こす弊害を認めたうえで、模倣がイノベーション(革新)を引き起こすことを論じ、生物や社会・芸術の世界ではあたりまえの「模倣は創造の源」の原理を、多くの事例を引きながら経営学として展開している。

 著者は、すぐれたお手本からインスピレーションを得て、独自の仕組みを築いていく模倣を、イノベーションとイミテーションをかけ合わせた「イモべーション」という言葉で表現する。その担い手、すなわちイモベータは、他社のアイデアを模倣することにも、自らアイデアを生み出すことにも長けている。アップル、IBM、P&G、GEなど、イノベータとして知られる企業は、すぐれた模倣者(イミテータ)でもあるのだ。これらの企業は、すべて模倣のための「対応づけ」に成功してきた。複雑な行動を一つひとつの要素に分解して再構築したり、うわべの意味をなぞるだけでなく、その根底にある意味をすくい上げ、必要があれば解釈し直したりという作業を経て実現する知的な行為としての模倣は、新たな価値をもつ製品やビジネスモデルを生み、イミテータをイノベータにする。

 日本向けに章を追加したことで、「模倣によるイノベーション」がより身近に感じられる刺激的好著。(叢虎)


『コピーキャット 模倣者こそがイノベーションを起こす』
オーデッド・シェンカー 著
東洋経済新報社 刊(1800円+税)
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