北斗七星

北斗七星 2012年12月17日付 vol.1461

2012/12/20 15:38

週刊BCN 2012年12月17日vol.1461掲載

▼「平家女護島」。平清盛に流刑で島流しにされた俊寛僧が孤独に打ちひしがれる歌舞伎の演目だ。15年以上前、この島「鬼界ヶ島」の本当の舞台とされる硫黄島の海岸で、当時の中村勘九郎(のちの勘三郎)が演じた。

▼中村勘三郎さんの容体悪化の報を受けて、歌舞伎に興味のなかった私だが、検索してこの演目を知った。一度は観たいと心が動いたが、逝去後の追悼番組でようやく硫黄島のシーンに接することができた。俊寛を島に残して舟が去り、泣き叫ぶ姿。数分間の映像だが、観る側も孤独感に襲われるほど魂を揺さぶる演技だ。

▼「梨園の若大将」の愛称で親しまれ、大衆を歌舞伎に引き込んだ立役者だ。キュレーション・メディア「NAVER」が彼の名言集をまとめたなかに、こんな言葉がある。「型をしっかり覚えた後に『型破り』になれる」。型を極めたからこそ、歌舞伎を海岸で演じるなど、型破りな行動で人を沸かすことができたのだろう。

▼衆議院選挙が終わり、新たな体制が生まれる。だが、歌舞伎でいう「守破離」を極めて、芯があり、この国を先導するような政治家は見当たらない。今一度、国民に自らの意思を伝えるための鍛錬をしてほしい。(吾)
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