BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?』

2012/11/01 15:27

週刊BCN 2012年10月29日vol.1454掲載

 「管理会計」と聞くと、数字をいじくり回すというイメージを抱きがちだ。だが、現実の商売にあてはめると、「儲かっているはずが、実は赤字を垂れ流している」などという実態を浮かび上がらせるのに最適の手法だということを本書は教えてくれる。

 しかし、「管理」とか「会計」にアレルギー反応を示す人も多いことだろう。ということで、本書はストーリー仕立てで、読み進むうちに「儲かる仕組み」が理解できるようになっている。主人公は、女子大生の菅平ヒカリ。ゼミの教授に実習先として、あるファミリーレストランを紹介された。実習生として勤務することになったファミレスは、とんでもない問題を抱えていた。赤字続きで、閉鎖の憂き目にあいそうな状態だ。店のテコ入れ策として、社長は管理会計に明るいと自負する人物を経営企画室長として迎え入れた。室長は、コスト削減を柱とする「アクションプラン」を打ち出し、店長にそのプランに沿って店を運営するように迫った。アルバイト店員の時給を下げ、食材にかかるコストを削減し、店の照明も落とした。涙ぐましい努力の結果は、顧客離れというかたちで現れた。

 このままでは潰れるのは時間の問題。逃げ腰の店長に代わって、ヒカリが立ち上がった。「お客様が望んでいることは何か」という基本に立ち返って、それにふさわしい店を仲間のアルバイトたちでつくりあげた。

 「管理会計」は、現場でこそ生きるという意味が理解できる一冊である。(仁多)


『50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?』
林 總 著
ダイヤモンド社 刊(1500円+税)
  • 1