旅の蜃気楼

沖縄と中国の古くて深い関係

2012/10/04 19:47

週刊BCN 2012年10月01日vol.1450掲載

【沖縄発】沖縄の「ゆいレール」に乗った。2両編成のかわいらしいモノレールだ。那覇空港から市内のホテルへの移動で使った。午後7時過ぎ、9月の三連休の最終日だから空港は賑わっていた。左後ろの方角から中国語が聞こえる。右後ろの家族連れも中国語だ。沖縄は中国の人が多いようだ。7歳と4歳ぐらいの姉妹が楽しそうに父親と話している。幼い娘と父親の間柄は私も経験しているので懐かしい。

▼ホテルでは、沖縄タイムスの友人が待っていてくれた。6年ぶりの再会だ。チェックインを済ませて、「ディープな沖縄の店で」との誘いに乗った。その店は山羊料理の店で、「山羊の刺身があるんだけど、食べる?」との勧めには首を横に振った。その代わり、肝臓をすり身にしたチャンプルが出た。野菜に山羊の風味が絡まっている。「どう? 食べられる」とたずねられた。あまり好みではなかったので曖昧に答えた。

▼泡盛の水割りが進むうちに6年の歳月が埋まり、会話もディープになってきた。沖縄は尖閣諸島の所属する県なので、私は緊張感をもって街に入った。到着早々、日常生活の匂いがする中国語に取り囲まれたので、緊張の出端をくじかれた感じはしたが、沖縄の中国人も現在の日中関係に緊張感を抱いているのではないかとの話を聞いた。

▼沖縄と中国の関係は古い。お墓や建造物は今も中国の文化を引き継いでいる。中国の人々は世界中に中華街をつくって、中国文化が集積する場を築く。ところが、沖縄には中華街がない。中国人だけでまとまる必要がないほど、同化しているからだ。尖閣諸島の周辺は昔からすぐれた漁場として名高い。位置的には沖縄が一番近いから、昔から周辺国の人が集まってきた。台湾とは目と鼻の先だからねぇ。酔いに任せて会話が進んだ。こうして話していると、中国がとても身近に感じられた。(BCN社長・奥田喜久男)


観光客の中国人と、生活している中国人が混在する沖縄の街なかの風景
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