旅の蜃気楼

日立の“神社”を心を込めて参拝

2012/09/13 19:47

週刊BCN 2012年09月10日vol.1447掲載

【横浜・戸塚区発】新しい建物はすべてが新鮮で人も華やいで見えるから、清々しい。日立製作所の話だ。横浜市と川崎市に点在していたソフト開発部門の3500人が、横浜市の戸塚区吉田町に集結した。部門名を正式に記すと、「情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部」。今回訪ねたのは、開発統括本部長兼事業統括本部事業主幹の阿部淳さんだ。肩書きが長いから、お便りの宛先は小さな文字で書くとしよう。

▼阿部さんから「お出でになりませんか」とお誘いが入った。いそいそと出かけた。6階建ての真新しいビルには、「”マイ神社”があります。ご覧になりますか」と、阿部さん。私が神職修行をした身であることを知っておられる。「では、ご一緒にお参りしましょうか」。芝生を敷き詰めた屋上の中ほどに、赤い鳥居と小ぶりだがしっかりした造りの赤い祠がある。お稲荷さんだ。

▼鳥居の手前に並んだところで「阿部さん、正式参拝しましょうね」。この位置で軽い会釈をして、進む。二人が歩くと参道はぎゅうぎゅうだ。5、6歩目で拝殿に着く。足を揃えて、二礼二拍手一礼を終える。そこで軽く拝殿に会釈してから正中線に近い足を引いてからだの向きを変えて、鳥居に向かう。鳥居を出たところで再び体の位置を拝殿に戻して、神域に向かって軽く会釈して、退出する。

▼このような正式な参拝をすれば、「心が洗われる」と神職はのたまうと記しておこう。実はこの日は猛暑で、かんかん照りの下での参拝だった。拝殿に向かって柏手を打つ。まろやかに軽やかに澄み切った音で「ポン、ポン」と鳴らす。ああ、心地のいい音だ。退出してから、阿部さんは説明してくれた。「前にあった場所からきちんと遷座しました。ソフトも最後は神頼みですから」と、大真面目。わずかな福島訛りが耳に心地よかった。(BCN社長・奥田喜久男)

聞き慣れてくると、祝詞の声と同じく、柏手の音で神職を特定することできる
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