旅の蜃気楼

通信系分野で中国一の大学を訪ねて

2012/07/19 19:47

週刊BCN 2012年07月16日vol.1440掲載

【成都発】上野公園のパンダ「シンシン」が7月5日に出産した。今回は少し控えめな騒ぎで安心した。日中間がギクシャクするなかでも、生命の誕生には顔がほころぶ。パンダは四川省に棲息している。州都の成都市内にあるパンダ飼育センターには赤ちゃんからお年寄りらしきパンダまで、園内は放し飼いのパンダだらけだ。なかでもベビーベットに並んだ6頭の赤ちゃんパンダが昼寝する姿は、一見の価値がある。心のしこりがすっかりほぐされること請け合いだ。

▼成都を訪れるのは3回目になる。回を重ねるごとに街の地図が頭に入り、空白域が少しずつ減ってきて、緻密な地図が完成してきた。日本に帰って四川省の話をすると、たいていの場合、三つの話題で盛り上がる。かわいらしいパンダ、三国志の軍師・諸葛孔明、真っ赤な色で激辛なのにおいしい麻婆豆腐についてだ。

▼IT業界の人と話すと、もう少し話題が広がる。成都の内陸で世界の大手SIerが進出するソフトパークと、iPadを生産する富士康(フォックスコン)の10万人の工場があるという話題だ。こうしたIT産業の先進性を成都に誘致するには、中央政府の方針に沿った政治的な活動が背景にある。場所と並外れた優遇政策、そして技術系の人材だ。

▼電子科技大学を訪ねた。通信系分野では中国一の評価を得ている大学だ。「この分野では清華大学を上回ります」と、校長助理の申小蓉さんは鼻を高くする。在校生は3万3000人。キャンパスは二つある。市内の在来校舎1万2000人と、2007年から西部工業地区のキャンパスに2万1000人の学生がいて、全寮制で勉学に励んでいる。同じ地区に富士康がある。毎年8000人の大学卒業生が成都を築いている。頼もしい街だ。(BCN社長・奥田喜久男)

電子科技大学の本館を案内してくれた校長助理の申小蓉さん
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