BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『武器としての交渉思考』

2012/07/19 15:27

週刊BCN 2012年07月16日vol.1440掲載

 『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』に続く『武器』シリーズ第三弾。著者は投資家・経営コンサルタントで、京都大学客員准教授として意思決定論などの講座を担当している。本書は、その授業のエッセンスをまとめた「白熱教室」モノと思っていただければいい。「合意をつくり出す手段としての交渉」を自分の武器にするノウハウを理路整然と語っている。

 われわれは他人と交渉するとき、どうしても自分に有利な結果を導くための主張に終始しがちだ。しかし、実際の交渉は「深いコミュニケーションであり、相互理解が求められ、またクリエイティブなもの」だという。交渉では、合意に至るために、相手の立場や利害関係を考えて、相手にメリットのあることを提示しなければならない。その前提となるのが、「どれだけ相手の主張を聞けるか」。相手の利害関係を理解したうえで、パイを奪い合うのではなく、パイという前提を見直したり大きくしたりしながら、利害関係を調整するのが「交渉」なのだ。

 ここで必要になるのが、相手の提案をのむこと以外に自分がもつ選択肢「バトナ」。交渉は、常に相手の提案と自分のバトナとを比較することで進んでいく。さらに、自分が相手のバトナを把握できれば、優位に立つことができる。そのためには、とにかく「相手の話を聞く」ことだ。

 「ビジネスなのだから、ウィンウィンはあたりまえ」「言葉こそ最大の武器」と説く著者の交渉術は、ビジネスパーソンが基本的に身につけておきたい資質。ぜひご一読を。(叢虎)


『武器としての交渉思考』
瀧本哲史 著 星海社 刊(860円+税)
  • 1