北斗七星

北斗七星 2012年7月9日付 Vol.1439

2012/07/12 15:38

週刊BCN 2012年07月09日vol.1439掲載

▼戦時中の東京大空襲で消失するまで、東京・芝の東京タワーが立つ場所には、高級料亭「紅葉館」があった。当時、原敬首相などの要人が条約改定を睨んだ外国人接待の場として使ったりもした。現在と同じ二大政党制の時代のことだ。

▼民主党の小沢一郎・元代表が消費増税関連法案に異を唱えて離党した。新党を立ち上げて政界再編へ動くらしい。歴史を振り返れば、原敬の当時は、立憲政友会と憲政会の二大政党で政権争奪が激化。民意を無視した政争は、1932年に海軍青年将校の決起による「五・一五事件」で、軍部の台頭を招いた。

▼国民不在の争いは不審を増大させる。文民統制が利く今の日本で、自衛隊が政治介入する事態には至らないだろうが、政権与党の混乱は、政治への期待をさらにしぼませるに違いない。海外に市場を求めようとしても、「政治=リスク」は企業努力だけでは解決できない。

▼明治の文豪・尾崎紅葉は、「紅葉館」から名前をとったそうだ。紅葉の言葉がある。「溺るるも水なれば生きるも水なり」。物事には表と裏があるが、政治家には裏も表も国民に明かして、納得のいく論戦をしてほしい。(吾)
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