どう転んでも儲かる――。日本向けのオフショア開発を手がける中国SIerは、強気の姿勢を崩していません。ここ数年、日本の海外オフショアソフト開発は伸び悩みが続いているにもかかわらず、なぜそこまで強気でいられるのでしょうか。
最大の理由は、背後にアジア最大の国内市場を抱えているから。彼らは、成熟市場のただなかにいる日本のSIerは、海外市場が喉から手が出るほど欲しいはずだ、と考えています。
足下をみているのではありません。中国のSIerは「ギブ・アンド・テイクでいきましょう」と提案しているのです。「ギブ」は日本からのオフショア開発やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の発注であり、「テイク」は手を携えての中国市場開拓です。
中国へのオフショアソフト開発の発注額は、年間およそ3000億円。日本国内の受託ソフト開発やBPO、遠隔システム運用サービスなど、もろもろを合わせた10兆円市場の数%に過ぎず、多くの中国SIerは、まだ大きな伸びしろがあるとみています。
日本のSIerからみても、中国市場への進出に欠かせない地場のSIパートナーをつなぎ止めるためには、オフショアなどの発注量を減らせないどころか、むしろ増やしていかなければなりません。
これは、中国地場市場に向けたSIビジネスが十分に立ち上がった後で、「あなた(日系SIer)はもういらない」などと言われないようにするための保険でもあるわけで、裏を返せば、中国のSIerは「どう転んでも儲かる」のです。
中国SIerのしたたかな戦略を熟知したうえで、その戦略に乗るかたちで中国市場という果実を手にするのか、知らずに中国市場にのめり込んでいくのかでは、雲泥の差があるように思えてなりません。(安藤章司)
【中国有力SIerの記事はこちら】
<インタビュー・ものづくりの環>東忠集団(Totyu Group) 董事長 丁 偉儒「中国市場のスピードと日本の技術・ソリューションを結びつける」メールマガジン「Daily BCN Bizline 2012.7.12」より