BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『トヨタがF1から学んだこれだけのこと』
2012/07/05 15:27
週刊BCN 2012年07月02日vol.1438掲載
著者はモータースポーツジャーナリスト。とくにF1を中心に取材活動を行ってきただけに、その識見は幅広く、深い。本書はトヨタのF1活動をドラマとして追いかけるのではなく、トヨタがこの8年で得たもの、失ったものを検証することに徹した著者にとっては異色の作品だ。トヨタのマネジメントを論じた「トヨタ本」の著者たちならもっと直截なもの言いをするであろう箇所でも、抑制の利いた表現で冷静に分析してみせる。トヨタ自工・自販時代に遡ってモータースポーツへのトラウマを論じた項などは、その白眉だ。
トヨタはF1参戦にあたって、常識的な参戦方法であるエンジンの供給だけでなく、車体設計からエンジン開発、チームのマネジメントまでを行う体制で臨んだ。それはメーカーとして、得られるものを最大化する作戦だった。
ドイツ・ケルンのトヨタ・モータースポーツ(TMG)を中心に活動してきたパナソニック・トヨタ・レーシング。本当にあと1年続けていたら、表彰台の中央に上がっていたのに、と思う。行間からにじみ出る無念の思いが、本書の一番の美点かも知れない。(叢虎)
『トヨタが F1から学んだこれだけのこと』
赤井邦彦 著 日本経済新聞出版社 刊(1600円+税)
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