「世界の工場」と呼ばれ、ハードウェア偏重の産業構造とみられていた中国で、今、ソフト・サービスがじわじわと存在感を増しています。
中国大手IT調査会社の賽迪顧問(CCIDコンサルティング)によれば、2011年の中国IT市場全体に占めるハードウェアの構成比が65.2%、ソフト・サービスが34.8%だったのに対し、2014年にはハードウェア59.3%、ソフト・サービス40.7%と、ソフト・サービスの割合が40%台にまで増える見込みです。
ただ、外資系ベンダーからみれば、とくにネットを活用するサービスの中国での展開は極めて参入障壁が高く、日・米・欧であたりまえのように使われているネットサービスの多くは、中国では制約対象になりがちです。
その一方で、日欧米で使われているソフト・サービスのほとんどは、実は中国の地場企業が類似のサービスを提供していて、中国に住む人々はまったく困っていません。もとになるソフト・サービスを考え出すのにどれだけの努力が払われたのか、少しくらい敬意を示してほしいところですが、しかし、いかにも中国らしいといえばらしい……。
中国政府は、すでに日本のIT市場規模を上回る巨大な国内市場を背景に、国内ソフト・サービス企業を戦略的に育成しています。外資規制を含む一連の施策をみると、当局がどれほど国内ソフト・サービス産業を重要視し、戦略商材と位置づけているかが如実に伝わってきます。
日本の役所に同じことをしろとはいいませんが、せめてもう少し、戦略商材という認識をもって国内ソフト・サービス産業の育成に熱意を示してほしいものです。(安藤章司)
【CCIDコンサルティングの記事はこちら】
<賽迪顧問の調査で読み解く日中IT市場の変遷>高度成長続ける中国IT市場メールマガジン「Daily BCN Bizline 2012.7.5」より