旅の蜃気楼

この目で見て実感する「国の境」

2012/05/31 19:47

週刊BCN 2012年05月28日vol.1433掲載

【ラオス発】中国からラオスに入った途端に、のどかな雰囲気になった。緊張感もないので拍子抜けだ。入出国管理事務所は工事現場によくある簡易な建物といった風情で、それも古びている。それでも国境の新しい事務所の建設が進んでいる。金色のお寺を模した堂々たる建物だ。新旧を見比べると、ラオスの経済成長の勢いがわかる。

▼中国に入国する大型トラックが列をなしている。その数は40台を超える。エンジンをかけたまま順番を待っているから、うるさいし、燃料の臭いが刺激的だ。不思議なことに、みな同じ荷物を積んでいる。大きな樹木の切り株だ。この原木が雲南省に入り、机とか置物に加工されて、中国の津々浦々に流れてゆく仕組みだ。太い経済交流を目の当たりにする思いだ。

▼ラオス国内に向けてクルマを進めると、右手に豪華なマンション風の建物がある。聞けば、「これは中国人向けのカジノだ」という。この一帯だけ、パラダイスといった様相を呈している。異文化を取り入れる国境の街らしくなってきた、と思ったら、すぐにのどかな山間の風景になった。これこそがラオス的な雰囲気だと感じた。

▼国と国の境には何があるのか。国境を見てみたい。ある時からそんな衝動にかられるようになった。「日中韓に土俵を拡げる」というBCNの新しい事業領域を決めてからは、なおさら思いが募った。まず世界地図を広げて、中国の国境線を指でなぞった。予想以上に広い国土だ。陸続きの隣国が、なんと14もある。民族が意思をもって線を引かない限り、国境は生まれない。中国は昔から意思をもつことを宿命づけられてきた。これまでに、パキスタン、ベトナム、ラオスの国境を見た。あと11か国の中国国境を歩けば、また違う世界が見えてくるかもしれない。(BCN社長・奥田喜久男)

ラオス側(左)と中国側それぞれの国境管理事務所を見比べると、国力の差が歴然だ
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