BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『ニュースキャスター』
2012/05/31 15:27
週刊BCN 2012年05月28日vol.1433掲載
大越さんが「ニュースウオッチ9」のキャスターに就いたのは2010年3月29日。ほぼ一年後、突如、「あの日」が襲ってきた。東日本大震災である。3月11日以降、他の報道番組がそうだったように、「ニュースウオッチ9」も特別番組を組んで、連日、夜9時から零時まで放映し続けた。その間、政治家や東電幹部の言動、被災地域の町長・村長や農業、酪農、漁業などに従事する人たちの悲痛な叫びといったものを可能な限り多く取材して、国民に知らしめてきた。
報道の舞台裏のできごとなどについてはもちろん触れられているが、著者がこの本で言いたいのは、ニュースキャスターの本質というか、どんな思考で、何をなすべきかということだろう。
「私は、そのニュースが視聴者に説得力を持って伝わるかどうかのポイントは、その中に『気づき』があること(発見)、それが一定程度の広がりを持つ性格のものであること(普遍性)、さらにはそのニュースが何を意味するかをしっかり追求できているか(核心)という、大きく言って三つの柱があるのではないかと思っている」
被災した地域を取材で飛び回り、よかれと思って報道したことが当の被災者には「意を尽くしていない」と指摘されたことなども率直に記している。著者の人柄がにじみ出る本である。(仁多)
『ニュースキャスター』
大越健介 著 文藝春秋 刊(750円+税)
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