BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本は世界一の環境エネルギー大国』

2012/05/10 15:27

週刊BCN 2012年05月07日vol.1430掲載

 フクシマの原発事故以来、エネルギー供給体制の再構築がにわかに全国民の関心の的となっている。しかし、産油国ではなく、天然ガスの産出量も乏しい日本で、原子力以外の効率的なエネルギーが望めるのだろうか。本書は、その疑問に答えてくれる。しかも、「日本は世界一の環境エネルギー大国」というのだ。

 代替エネルギーの代表格には、風力、太陽光、地熱といった再生可能エネルギーがある。わが国の再生可能エネルギーの潜在能力に関して、環境省が東日本大震災後の昨年4月21日に公表した「平成二二年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」が例示されている。それによると、風資源は19億kWにも達する。2009年度の日本の全発電設備容量が2億397万kWであることを勘案すれば、その8倍もの資源量が見込まれるという。さらに、日本近海に膨大な量が埋蔵されているメタンハイドレート(天然ガスの一種)は、その効率的な採取法が確立されつつあるという。

 本書で特筆すべきは、「日本人の感性」がエネルギー分野で大きな武器となることに言及している点だ。すなわち、「もったいない」の精神である。この精神が例えば排熱をエネルギーに転換する技術に結びつく。日本の技術者が開発した「超々臨界圧」を応用した石炭火力発電所は、「世界一クリーン」だと世界的に評価されている。

 たゆまぬ技術革新により、近い将来にはきっと安全で安心して使える電力・ガス供給体制が整備されることを実感することができる。(仁多)


『日本は世界一の環境エネルギー大国』
平沼 光 著 講談社 刊(838円+税)
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