旅の蜃気楼

「上海には負けないぞ」と武漢の人たち

2012/04/26 19:47

週刊BCN 2012年04月23日vol.1429掲載

【武漢発】中国の街をいろいろ歩いていると、混乱することがある。「この街って、どこなの?」。武漢を訪ねた時のことだ。タクシーに乗って大きな川を渡っていたら、橋の脇にある歩道を、児童が列をなして楽しそうに戯れながら歩いている。どこかで見た光景だ。前方には黄鶴楼が見える。「そうだ。ここは武漢だった」。

▼武漢は湖北省の省都で、1級都市だ。地理的に中国全土の中心に位置し、人口1000万人の大きな街で、出会う人はみんな、自分たちの郷土の歴史に誇りをもっている。「上海ができたのは、ほんの少し前だ」というふうに。時間軸でいえば、確かにその通りだ。しかし地下鉄がない。そのことを知っていて、武漢の日系人に意地悪く「武漢に地下鉄はありますか」とたずねたら、「今、つくってます。あの広場を見てください」と言いながら、ブラインドを開けて外の工事現場を指差した。その人の所作に思わず苦笑いした。「上海なんかには負けないぞ。武漢も、今年には地下鉄が開通する」と、いかにも自慢げだったからだ。

▼JETROの武漢事務所を訪ねた。所長の天野真也さんに会った。武漢事務所は開設して1年目で新しい。武漢は中国全土のロジスティクスのコストを削減するには最適の位置にある。大学は80校で、学生は100万人。人口の1割が大学生で優秀な人材が揃っている。現在、日系企業は243社が進出している。

「今日は午前中に、三菱東京UFJ銀行武漢支店の開所式がありました。武漢にはますます企業が集まりますよ」と説明してくれた天野さんは、中国勤務のベテランだ。いろいろ話を聞くうちに、武漢のお国自慢のようにも聞こえて、好感を抱いた。さっそくその場所に行くことにした。銀行の支店だからと、大きな看板と1階の店舗を探していたら、階上だった。思い込みはいけない。(BCN社長・奥田喜久男)

武漢でも地下鉄の工事が急ピッチで進んでいる
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