BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『雇用創造革命』

2012/04/05 15:27

週刊BCN 2012年04月02日vol.1426掲載

 2000年1月、東京・浅草橋に、従業員4名、10坪ほどのガレージオフィスが生まれた。それが今や総勢2000名規模の会社に成長している。ネットワーク・エンジニアの派遣を事業とするアイエスエフネットがその会社である。

 同社の最大の特色は、知的障がい者をはじめ、ひきこもり、ホームレス、DV被害者など、いわゆる就労弱者を“積極的に”採用し、みごとに戦力化していることにある。

 この本の著者は、36歳でアイエスエフネットを起こした人物だ。彼はなぜ障がい者の雇用を積極的に行おうと考えたのか──。きっかけとなったのは、創業時の採用難だったという。2000年当時はITバブルのピークで、無名のベンチャー企業がエンジニアの募集をかけても人が集まらなかった。たまに応募してくる経験者は、態度が不遜で一緒に仕事をしようという気にならなかった。そんな折、「人の何倍も努力して、技術を身につけます。ぜひやらせてください」と、未経験の人物が応募してきた。この出会いが、発想の転換につながった。無知識・未経験者を採用して、育てたらどうだろう、と。

 その延長にあるのが、障がい者などの雇用である。「人に合わせて雇用を創る」という発想に切り替えれば、どんな人にも働く場所を提供することができる。実際には、障がい者が働く現場ではさまざまなアクシデントが発生したのだが、工夫を重ねて一つずつ壁を乗り越えてきた。その過程を読めば、人を使うことの難しさと、その先にある喜びが伝わってくる。(仁多)


『雇用創造革命』
渡邉幸義 著 ダイヤモンド社 刊(1500円+税)
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