BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>「中国模式」の衝撃―チャイニーズ・スタンダードを読み解く

2012/02/16 19:47

週刊BCN 2012年02月13日vol.1419掲載

 「中国生活は、毎日が実にスリリングだ。一瞬たりとも気が抜けない」という書き出しで始まるこの本の著者は、講談社の北京法人に出向中の人物である。日常生活、ビジネス、経済、政治、外交の五つの側面から「中国模式」の実際を克明に伝えてくれる。

 日常生活の一端。「通勤地獄」という言葉があるが、北京の地下鉄は本当の意味での地獄らしい。地下へ降りる入り口まで通勤客が溢れ、ホームでは電車から降りようとする人、その人たちの流れに逆らって車内に踏みとどまる人、われ先に乗り込もうする人、阿鼻叫喚の状況が、毎朝繰り返されているという。要するに、弱者は置いてけぼりにされるというのが「中国模式」の根底にあるのだ。

 「中国模式」は、ビジネスシーンにも姿を現す。会社への帰属意識がなくカネで簡単に動く従業員、商取引のスピード感など、あらゆる場面で日本と中国のギャップが際立つ。その狭間に立たされた日本人駐在員の多くは、ノイローゼに悩まされてしまう。

 中国の政治(政権)については非常に興味深い観察がなされている。「ポスト胡錦濤」の本命とされる近習平氏は、どのような経緯で中央に引き上げられてきたか。彼がトップに就いた後、どういう方面に力を入れるか(台湾との関係を強化するとみられる)。ライバルの李克強氏との力関係は、などなど。

 隣の超大国の動静は、日本にも大きな影響を及ぼすという現実を、とっつきやすい文章で認識させてくれる本である。(仁多)


『「中国模式」の衝撃―チャイニーズ・スタンダードを読み解く』
近藤大介 著 平凡社 刊(840円+税)
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