BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『すべては社員のために「がんばらない経営」』

2012/01/26 15:27

週刊BCN 2012年01月23日vol.1416掲載

 ケーズデンキの二代目経営者(ケーズホールディングス会長兼CEO)が著した本。タイトルは、「がんばらない経営」。生き馬の目を抜くような熾烈な競争を展開する家電量販店業界にあって、ケーズデンキは創業以来64期連続増収を果たしている。それが「がんばらない」という経営哲学を貫いてきたことの果実だというのである。

 「がんばらない経営」とは、どういうことなのか。著者の加藤修一氏は、創業者(父)から数々の薫陶を受けた。その一つ「会社は急に大きくすると寿命が来てしまう。寿命が来ないように、会社はゆっくり大きくするものだ」という言葉が、現在のケーズデンキの根幹をなしている。

 この経営哲学は、販売の現場で具体的なかたちとなって現れる。まず、販売員にはノルマが課されていない。「ノルマを課すと、どういうことが起きるか──。販売員は、お客様が必要としている商品ではなく、売りやすい商品、利益が取れる商品を売りつけようとするのです」。顧客第一主義とノルマは相容れないというわけである。

 メーカーとの関係にも深い気遣いがみられる。「新製品が安いケーズデンキ」を標榜し、お客様に新製品をいち早く提供するには、メーカーとの信頼関係が不可欠。商品部は、月末仕入れで仕入れ値を叩くのではなく、いいものを仕入れるために月初に商談するのだという。

 メーカー、量販店、顧客のすべてが幸せになる循環を築くための教科書がここにある。(仁多)


『すべては社員のために「がんばらない経営」』
加藤修一 著 かんき出版 刊(1400円+税)
  • 1